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ナチス時代へ逆戻りする日本。共謀罪法案は安倍政権のタイムマシーン?

Bysubcultureist

Aug 12, 2018

(帰って来たヒトラーの日本版が実録映画かもしれない)

もしナチスと日本帝国が第二次世界大戦を制していたら。想像しただけで恐ろしい話だが、21世紀の日本において、それを実現しようとする動きがある。舵を取るのはもちろん、釈放されたA級戦犯岸信介の孫である安倍首相だ。いよいよ憲法改正の時期を2020年と明言した首相だが、『我が闘争』を教材認定してみたり『ヒトラー選挙戦略』に推薦文書を寄せる大臣らを内閣に置くなど、ナチスへの肯定的な姿勢を無視することは難しくなってきた。

5月3日首相自らが明らかにした2020年の憲法改正だが、ナチスがワイマール憲法を都合よく改正していったように日本が誇る戦後の平和憲法を一新するつもりのようだ。それに向けての一歩として共謀罪法案が衆議院にて可決され、現在参議院審議中である。この法案は日本帝国の暗黒時代ともいえる1925年から1945年の間、日本を恐怖に陥れた治安維持法の再来と言われ、国会前デモや専門家を含め反対する声は数多く上がっている。治安維持法は、制定された当初は共産主義や反政権派を取り締まるためのもので一般市民は対象とならないとされていたが、いつの間にやら政府批判を口にする者は夜の内に消え、二度と姿を見ることはなくなったという。今回の共謀罪は「テロ等準備罪」とされ、あくまでもテロに及ぶ犯罪組織を取り締まるためのもので一般人は対象とならないとされているが、法案内に記載されている277の違法行為は解釈によっては容易に範囲を一般人に広げることが可能といえる。この危険性を察知した国連人権理事会のケナタッチ特別報告者からも法案の人権侵害の可能性を懸念した書簡が首相宛に届いている。

しかしこの警告に対して安倍首相は外務省を通じて「強く抗議した」との報道。批判には国内はもちろん、国外からであっても耳を傾けない強硬姿勢を見せている。

政党をナチスになぞらえるのは最も安易な政治批判とされているが、 安倍政権とナチスの共通点を見て見ぬふりすることは日に日に難しくなってきている。安倍政権がナチスへの敬意を公言しているからなおさらだ。 ナチスと戦前軍国独裁主義への異様な憧憬は政権発足当初から確かにそこにあった。

2013年夏、かねてから失言でメディアを賑わしてきた副総理そして財務大臣である麻生太郎が支援者へのスピーチ内で「ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうか」発言している。

また、安倍内閣の高市早苗総務大臣と稲田朋美政調会長に関しては日本のネオナチと呼ばれる山田一成とのツーショット写真が露呈した。そして高市総務大臣はさらに『ヒトラーの選挙戦略』に推薦文を寄せていた事が発覚し、海外メディアを賑わせたが国内メディアは目を瞑った対応となった。

公にナチスをお手本にしているようでは、類似点を指摘されるのも仕方のないことだ。

追い打ちをかけるように、安倍首相は国際的にも非難される在特会との関係が知られる山谷えり子氏を国家公安委員会委員長に任命。首相自身、そしてその他の閣僚たちからも在日韓国人への差別に異論を唱える声は聞こえてこない。そして政府は4 月にはヒトラーの『我が闘争』は教材使用に適切と認定した。野党の質問に対し、「仮に人種に基づく差別を助長させる形で使用するならば、同法等の趣旨に合致せず、不適切であることは明らかだ」と述べるにとどまった。

この件に関して当初主要メディアは報道を自粛したようで取り上げられることは少なかったが、世論の猛反対によってやっと取り上げられた模様だ。そして松野博一文部科学相は4月25日の閣議後記者会見に「人種に基づく差別やジェノサイド(大虐殺)は絶対に許さないという意識を定着させるため、教育の充実を図っていく」と強調したが、これまでの安倍政権の姿勢を見ると今ひとつ説得力に欠けて見えることは否めない。

また今年に入って政権は、特攻隊の思想の源となった教育勅語も再導入を検討していることを発表。明治天皇に1890年に制定された教育勅語は、最大の善行は天皇のために命を捧げることと国民を諭すものだった。そしてそのイデオロギーが原動力となり後の神風特攻隊、人間魚雷、沖縄の集団自決などの悲劇が起きたといえるだろう。戦後、1948年に衆議院決議にて「これらの詔勅の根本的理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残すものとなる」という言葉と共に失効が認定されたのだ。それにも関わらず再来の危機が目前まで迫ってきている。戦前回帰を求める軍国主義者にとっては「進歩」の一年といえる。銃剣も体育の種目として再び導入されることとなっており、戦前教育復活に予断がない。

また、安倍政権はこれまでに繰り返し、ナチスを見習うような節を見せている。自民党のマニフェスト自体が、戦前の帝国主義の復活を謳うものといっても過言ではない。神の子孫である優れた大和民族がアジアを制し、下位に当たる他のアジア民族を労働や性の奴隷として使う、といったところか。

直近で日本が直面している危機といえば先述の共謀罪強行採決だろう。現在参議院審議のこの法案だが、正式には「テロ等準備罪」。曖昧な名称だが、その内容も不透明な部分が多々あり、二人以上の人間が犯罪を犯す準備行為に及んだ場合、実際に罪を犯していなくても罰せられるというものである。しかしこの「等」そして「準備」という文字は何を指しているのだろうか。その定義の決定権は政府にあるというのである。つまり、一般市民のいかなる日常行為も犯罪行為になり得る危険性を孕んでいるのだ。

現段階で277の犯罪が対象とされており、切手の偽造、無免許で競艇レースに出ることなどが含まれている。しかし改正によっていくらでも項目は後から追加できる。

政府は採決を進める理由として2003年に国会承認した国際連合条約(TOC条約)に批准するために共謀罪が不可欠であると主張。しかしこれは国民を煙に巻く口実でしかない。

ジャパンタイムズによれば(http://www.japantimes.co.jp/news/2017/03/25/national/media-national/how-the-word-terrorism-can-help-pass-a-bill/#.WRqYg1N96SM) 既に日本弁護士連合会からこれを論破する声が上がっている上に、国連関係者からも「この条約はテロに特化したものではない。主要な目的は人身売買、麻薬取引や資金洗浄など国家間の犯罪の防止を強化することだ。」との指摘もある。

政府は「テロ」と「2020オリンピック」という二つのキーワードを駆使して、「世界一安全な国造り」を推し進めようとしているのだ。そして首相らが描く安全国家の完成形は、国民を常に監視下に置き、政府の管理のもと反対意見を徹底的に排除する社会だろう。

これでは治安維持法の再来と言われても無理はない。1925年に制定されたこの法律は戦前の日本において、政治的弾圧の最も効果的な手段だったと言われている。制定当時は共産主義を取り締まるための法律であり、一般市民は対象とならないとされていたものの、気づけば一般市民の監視、逮捕が日常茶飯事になっていたという。

憲法学者の飯島滋明教授は何ヶ月も前に共謀罪への警笛を鳴らしていた。「この法案は我々の憲法の最も重要な三つの原理に背く可能性がある。基本的人権の尊重、平和主義、国民主権の三原理を疎かにすればまた暗黒時代に逆戻りしてしまう。これは治安維持法の現代版である。」

このように、なんとも恐ろしい共謀罪法案の強行採決だが、これは戦後の平和憲法を取り壊し、戦前の日本を取り戻すという政府の最終目標に向けての序章でしかない。

一つ確かなことは、安倍政権は有言実行であるということだ。

少し遡ってみよう。

2013年の麻生大臣のナチス失言のあと、安倍政権は世論の大反対を押し切り特定秘密保護法を押し通した。これは文官、公務員が特定秘密を漏洩した場合10年間、また記者や一般市民が特定秘密を露呈、もしくは特定秘密について質問した場合5年間の服役が課せられるといった内容の法律である。ここで注目すべきは、どの情報が特定秘密に分類されるのか政府が公開しなくても良いという点だ。(http://www.japantimes.co.jp/opinion/2014/12/13/commentary/japan-commentary/abes-secrets-law-undermines-japans-democracy/#.WRLR1lN96SM)

これでは、無実な一般市民が特定秘密について質問しているとは知らずに、自身が犯した罪さえ分からないまま罰せられるというケースも起こりかねない。カフカ小説のようなシュールな話だがこれが現実になりうる未来が日本を待ち受けている。

さらにこの特定秘密保護法の採決は日本が海外にて戦争に参加することを可能にしてしまった。昨年の明仁天皇の生前退位表明を、平和主義を守り抜こうとする天皇の政府への抗議として捉える世論は少なくない。天皇が現状の憲法の絶対的支持者であり、戦時中の日本軍の数々の悪行を悔いているということは確固たる事実なのだから。

戦後70回目の憲法記念日でもあり、共謀罪採決に国が揺れる5月3日、 安倍首相は極右翼神道カルトである日本会議が主催した会見にて2020年1月までに憲法改正を目指すと発表した。国民の反発はすぐに聞こえてきたがもちろんおかまいなしだ。

ここまで来れば自民党の憲法改正案は日本が戦争国家になる以上の危険を孕んでいることが明快である。安倍首相は2012年の自民党改正案発表時に改正案に「緊急事態要項」 が含まれることを明らかにした。これは国家への外部攻撃、内乱や自然災害が起きた場合、内閣の承認を得て緊急事態を宣言できる権限を首相に付与するというものである。さらに、内閣が通常の法案採決の過程を経ずに、法律と同じ効力を持つ法令を発令することも可能となる。首相は国会を通さずに予算を採択することもできる。

日本の法律学者ローレンス・レペタ教授は、これはナチスの戦略から直接引っ張ってきた手段だと言う。具体的には、ワイマール憲法にあった緊急事態要項を巧みに使いドイツ国会議事堂の放火を受けて「首相や官僚の暗殺を企てたり協力した者は処刑、もしくは終身刑または15年以上の服役に処すと宣言した。さらには国会議事堂の放火魔が共産主義であったという事実を捏造し、共産党を禁止し全国選挙の出馬候補者全員に逮捕令状を出した。企てる、協力するという行為は警察や検察によっていとも簡単に捏造された」。

調査報道に定評のある『報道ステーション』でも、政府批判を理由に古舘伊知郎氏が降板になる前にこんな特集を組んでいた。2016年3月16日に放映されワイマール憲法から学ぶ、自民党憲法草案緊急事態条項の危うさ』と題された特集は自民党提案の「緊急事態要項」とワイマール憲法第48条内の緊急事態事項の類似点を検証したもので、2016年ギャラクシー賞を受賞している。特集内ではドイツの憲法学者がこれら二つの要項は本質的に同じであると明言し、ナチスがこの憲法の欠陥を乱用して権力を拡大していったことを見れば、日本も改正案を持って進めばこの先同様の危険が待ち受けていると警告している。

森友学園問題から国民の気をそらすために安倍首相が憲法改正時期を発表したのではないかとする声もある。

しかし、そうであれば、安倍首相率いる自民党がまさにナチスのように巧みにメディア操りプロパガンダを刷り込んでいるといえるのではないか。まずは報道の自由を制限し、政府の動きを国民が把握できないようにする。そしてあとはやりたい放題。2011年には報道の自由ランキングで世界11位だった日本だが、たった6年で72位にまで急落している。

ヒトラーにゲッペルスがいた。トランプにはバノン、ルパート・マードックが付いている。そして安倍首相には世界最大購読数を誇る読売新聞、そして読売王国の帝王渡辺恒雄が付いているのだ。

その癒着ぶりは、国会答弁で憲法改正について問われた安倍首相が「自民党総裁としての考え方は相当詳しく(インタビューに応じた)読売新聞に書いてある。ぜひそれを熟読して頂いてもいい」と発言したことからもありありと伺える。

安倍首相と仲間たちが作り上げたプロパガンダマシーンは準備万端だ。自民党はネット上での反対意見を糾弾するサイバーパトロール隊に報酬を与えて、ソーシャルメディアにもプロパガンダ拡散を推し進めている。そして首相の旧友である籾井氏を会長に任命した国家放送NHKは、今ではすっかり安倍テレビと化している。朝日新聞によれば、党内での異論もすべて弾圧に成功してきたため、党員もみな「ビッグ・ブラザー」に怯える日々だという。

これで日本会議の望む憲法を実現する要素はすべて揃った。

日本は来た道を着々と遡って、過去へと突き進んでいる。そして安倍首相は祖父、岸信介の叶わぬ夢を掴み取る寸前まで来ている。戦犯として逮捕されながらも裁判にかけられなかった岸は後に首相となり、帝国主義の復活を謳った。そしてそれは その夢は安倍晋三の原動力となっている。共謀罪法案の採決は自民党が2012年から静かに構築してきた軍国主義タイムマシーンのソフトウェアだったのだ。

歴史は繰り返すというが、日本では歴史改ざんを繰り返した挙句、過去から学ぶことができず今に至ってしまったようだ。それがこの世界の宿命なのか。民主主義を犠牲にしてまでも自身の意思を突き通した者が君臨する新たな時代。トランプ、プーチンそして安倍。「悪の枢軸」ならぬ「エリートの枢軸」誕生なるか。

しかし、安倍総理や自民党の老害幹部は歴史から学ぶことができなくても、歴史の大切さが分かる偉い人はまだ存在する。国家神道の復活を夢見る日本会議が、尊敬しているであろう偉人だ。

それは天皇陛下。

2015年の新年挨拶を改めて取り上げましょう。

「本年は終戦から70年という節目の年に当たります。多くの人々が亡くなった戦争でした。各戦場で亡くなった人々,広島,長崎の原爆,東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。この機会に,満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なことだと思っています。

この1年が,我が国の人々,そして世界の人々にとり,幸せな年となることを心より祈ります

合掌

 

(この記事はThe Daily Beastの英文記事に基づいて書かれ、趣旨翻訳)。

subcultureist

Managing editors of the blog.

4 thoughts on “ナチス時代へ逆戻りする日本。共謀罪法案は安倍政権のタイムマシーン?”
    1. Should we quote eating off the right-wing revisionist bandwagon kentgilbert instead? So much more credible. The Japan Times has some solid journalists working there and to lump all of them into “The Japan Times” as if that publication has no credibility is intellectual laziness.

  1. Is there a translation (not google, but an actual translation from a human being) of this article somewhere online?

    Thank you.

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